心のスイッチ

 




愛着形成というのは幼少期の大人との関係から受ける影響が大きいもので、例えば大人から愚痴を聞かされても子供は受け止めきれない。学校で困ったことがあってそれを話した時に話題を変えられたり、話しかけてもストレスに満ちた不快な目線を向けられればもう何もいえなくなるだろう。







こういう有害な態度には防衛規制が働く。ここで面白いのが、ふさぎ込んで自分の世界に入る人もいるが、逆に周囲の人に話しかけにいくタイプもいること。(ピエロかな)そして本当は自分が構って欲しいのに、相手を構うという行動に出る。問題はかまってほしいのは自分なんだという心の叫び、“自分自身の気持ち”に本人が気づいていなこと。


〜エスパーは学校に行く途中で、上級生二人の前を通りかかりました。そのとき、エスパーはにこりとしましたが、上級生のうちの一人が足を掛けてきて転んでしまったのです。膝からは血が出ていて、エスパーはすぐにでも家に帰りたい気持ちでしたが、学校へ向かいました。

学校につくと、友達からなんだか元気ないねと声をかけられました。本当は泣き出したい気持ちでしたが、うん、とだけ返事をして今は目の前のことに集中しようと決めました。

家に帰ったとき、まだ母親は家に帰ってきていなかったのですが、自室で本を宿題をやっているとしばらくして母が帰宅する音が聞こえました。そして怪我をした膝を優しく手当てしてくれました。家という安全な場所で、自分の味方である人といるというリラックスした状態になって初めて、エスパーは泣き出したのです。ここでエスパーは初めて自分の感情に寄り添いました。そうすることで、自分の今の痛みや、喜び、遊びたいという願望などにも目を向けることができて、またげんきになることができたのです。それまでは、ただロボットのように状況に適応していただけでした。

一方で、不快な状況を理解して、確実に手助けしてくれる母親の待つ100%安全な環境(自分にとってのそういう場所)に戻るまで、自分の感情と向き合うのを待ったのは、懸命な選択でもありました。

場所や時間、相手を選ばずに感情をあらわにするのは賢明ではありません。エスパーがもしも校庭にいたベンテに感情の赴くまま思いを打ち明けていたなら、彼女から軽蔑したような目つきで、しっかりなさいというこの上ない苦痛を味わいいっそう落ち込む羽目になったかもしれません。

エスパーにできたことは、母と話す前まで、上級生とのトラブルを一時的に無かったことにすることでした。自分の感情を外部に留めておくのです。彼が用いたものは自己防衛の戦略の一つでもあります。

彼が幸運だったのは、なぐさめ、気持ちを完全に立ち直させてくれ、自分自身の心と良質な交信ができるようになる手助けをしてくれる母がいてくれたことです。







自己防衛は、二つに分類できます。自分自身からの自己防衛、もう一つは他者からの自己防衛。

自身の恐ろしい感情から身を守るもの、これは内的自己防衛というものです。二つ目は距離を突然詰めてくる他者から自分を守るための自己防衛です。これは大人自己防衛でその人自身と他者との関係性の問題になります。


内的自己防衛のひとつに、逃避があります。忘却の一種です。忘却は今選んだこと、もしくはかつて選んだとののそのあと忘れようと決めたこと自体忘れてしまうことを指します。すべては私たちの意識から、ただただ消えてしまいます。

両親のどちらかから、かつておそろしいほどの虐待をされていたことすらも記憶のどこかに消えてしまうのです。ところが、全身の筋肉が緊張したり、こわばったり、息を深く吸えなくなったりなどの物理的な形で記憶が蘇ったりすることがあります。

私たちは、自分達の肉体を意識したくない時、深く呼吸しないようにします。完全に無意識的に。

よく起きる内的自己防衛
転換− スマホやSNSを過度にチェックする
投影– 厄介な感情や性質は他人のものであって自分自身のものではないような感覚に陥ったことがある人は多いかもしれません。例えば、母親自身が疲れているのに、まだ目が冴えている子供を寝かしつけようとするなどが含まれます。(自分がそうなのに、を相手のことにしてしまう)

自己の無気力感−過剰な食事、娯楽、睡眠などで無気力になります。また、現実の一部から目を逸らし耳を塞ぎます。

いきすぎたポジティブ思考– 他の人たちがわずらわしいことをして来る時、もちろんよかれと思ってやっているのだと常に考えることで怒りや悲しみが湧かないようにします。私達は自己防衛を状況によって使い分けます。

やるべきことは自分の話に耳を傾けてくれて支えてくれる友人と過ごしたり、思考をあえて深め自分自身の感情を知ることでしょう。心配なことは自己防衛をしすぎて気の置ける友人が1人もいなくなるということです。その場合、相手が真剣かどうかをちゃんと確かめることもなく何年もだらだら付き合ってしまう恐れがあります。

内的自己防衛と対人自己防衛のバランスをどう取るか。対人自己防衛は他人に距離を縮められないようにする自己防衛で、内的自己防衛は、自身の思考や感情、願望から自分を守る自己防衛です。

自身の内的自己防衛の戦略が脆い人には、対人自己防衛で身を守ろうとします。外界から自分を守るための強力な戦略が必要なのです。そういう人の場合、外界と接触するとすぐ影響を受けるので一人になろうとします。HSPの場合、自身の内面に対する戦略は非HSPよりも脆弱であることが多いといえます。







別の例を見てみましょう。
エスパーには家に帰れば適切な処置をしてくれる母親がいました。同じ経験を今度はマーチンという男の子がしたとします。 
家に帰ると母親がいましたが、そのおかあさんがきちんと助ける能力を持たなかったとします。母はマーチンに「別に泣くほどのことじゃない」とか「やりかえせばよかったのよ」といいました。次の日、マーチンは問題がなんら解決されないまま学校にいかなくてはならず、上級生たちに対する恐怖心を抑え、泣き出すのを堪えるのにエネルギーをついやさなければなりませんでした。

こういう場合に一番良いのは、他の大人を利用することです。たとえば、校庭にいたベンテです。ですが自分の母親でも受け止めてくれなかったものを他人のベンテが受け入れてくれるのだろうかという不安があります。もし、マーチン自身が自分の心と距離を置くのを選び、校庭にいた大人と関わりたいと思ったとしても、彼に共感を持つベンテはふさわしくありません。なぜなら、共感はマーチンの身体を覆うよろいを剥ごうとするものだからです。

私たち自身が今は触れてほしくないと思っているのにも関わらず、私たちの感情を目にした他の人がそれを増幅させ、抑えられなくすることがあります。マーチンが自分の感情と距離を置くときには同時に慈愛に満ちた他者からの申し出に対して自己防衛する必要があります。なぜなら愛情と気遣いによって、自制心を失う恐れがあるからです。


では、ベンテのかわりに、冷淡で自己中心的な人物で他人の傷には目もくれない人を選んだ場合どうしたでしょうか。対人防衛としての選択としてこれがしょっちゅう行われいつの間にか無意識に行われるようになると、大人になったときマーチンは冷淡な人や他人をあまり寄せ付けない人を常にパートナーに選ぶようになるかもしれません。
これはほとんど無意識的に選択が行われてしまうため、自分では自分のパターンに気付けません。

自己防衛の戦略は、しばしば無意識にとりますし、その戦略を長い間とってきた人も多いのでそれが私たちの人格の一部であると思われてしまうことすらあります。自分自身の自己防衛がどのように人格の一部と化していくのかはこの後詳しく説明します。


彼に共感を持つベンテはふさわしくありません。なぜなら、共感はマーチンの身体を覆うよろいを剥ごうとするものだからです。
私たちの感情を目にした他の人がそれを増幅させ、抑えられなくすることがあります。マーチンが自分の感情と距離を置くときには同時に慈愛に満ちた他者からの申し出に対して自己防衛する必要があります。なぜなら愛情と気遣いによって、自制心を失う恐れがあるからです。

個人的にはここの部分が衝撃的だった。
共感を示すことは“いいこと”もしくは、“やさしい振る舞い”として機能するものだと思っていたけれど、場合によってはマイナスにもなるということだよね、…その人の状況によっては。(上記の場合だとマーチンなら)慈愛に満ちた他者からの申し出に自己防衛する必要がある。それは自制心を失う恐れがあるから。

ここらへんの心の機能が非常に難しくないですか?自分でも分別がついているのかわからなくなる時がある。私の脳内で思い浮かんだのは、『サキ』というドラマで職場でいじめられている気弱な男性にサキがすごく優しくするんですよ。でもその優しさが彼を破滅に向かわせていました。なぜそうなっていったのかというとすごく説明が難しい。でも彼の中のスイッチを押したな、というのはわかりました。その答えが今明確になった気がします。いわゆる、ドラマ・サキ(観たことない方はすみません)に出てくるあの気弱な男性は、ここでいうマーチンだ。つまり、正しいケアなしに、自分の感情と距離を置いている状態。向き合える心の状態でもなく、また、他人に触れてほしくもない。だから同僚の女性(も出てくるんですが、この女性はこの弱気な男性に好意を持っており、だけど、見守っている。お茶を出したり声をかけたり些細なアプローチはするものの。どうして好きなのに助けないんだと思ったけど彼女は好きだからこそ見守っていたのか)

そこでサキは大いに共感を示し、またその男性を褒め散らかすんですよね。本当のあなたはそんなんじゃない、みたいなことをいって。

それでその男性はとうとう自制心を失い、事件を起こしてしまいます。サキが意図的に相手の心のスイッチを押した瞬間です。なので、このドラマは非常におそろしいなと思ったんですが、自分がまだ理解し切ってないことを描いていると思ったので、ずっと心に残っていた。。思わぬところでわだかまりが解消しました。
(ドラマ・サキは美しい隣人に出てくる、仲間由紀恵さんが演じてたサキが出てくるドラマです。復讐劇なので結構ヘビーですが、心理学など興味ある方や気になった方は観てみてください…)

以降はPatreon内でこうした自己防衛を無意識に続けていくうちに、人格の一部と化してしまうというところを話していきたいと思います。


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